複合機のセキュリティ対策ガイドリスクの全体像・搭載機能一覧・導入時の設定手順・運用ルールまで完全解説
目次
- 複合機に潜むセキュリティリスクの全体像
- 複合機に搭載されている主なセキュリティ機能一覧
- 複合機の導入時に行うべきセキュリティ設定手順
- STEP1:管理者パスワードを初期設定から変更する【最優先】
- STEP2:ファイアウォール・IPフィルタリングを設定する
- STEP3:ユーザー認証を有効にする
- STEP4:通信の暗号化を有効にする
- STEP5:HDD/SSDの暗号化と自動消去を設定する
- STEP6:USBポートの制限・FAX誤送信防止を設定する
- STEP7:ファームウェアを最新バージョンに更新する
- 複合機のセキュリティを維持するための日常の運用ルール
- 印刷物はすぐに回収する
- 退職者・異動者のアカウントを速やかに削除する
- ファームウェアの更新を定期的に確認する
- 操作ログを定期的に確認する
- リース返却・廃棄前にデータ消去を実施する
- メーカー別|複合機のセキュリティ機能を比較
- 複合機のセキュリティに関する国際基準と認証
- Common Criteria(CC認証 / ISO/IEC 15408)
- IEEE 2600 / JBMIAガイドライン
- まとめ|複合機のセキュリティ対策は導入時の設定と日常の運用が鍵
複合機のセキュリティ対策は万全ですか?——PCやサーバーのセキュリティ対策を徹底している企業でも、複合機の対策は手つかずというケースは珍しくありません。しかし、現代の業務用複合機はネットワークに接続されたIT機器であり、不正アクセス・情報漏洩・ウイルス感染のリスクがあります。IPA(情報処理推進機構)も複合機のセキュリティ設定を注意喚起しており、企業規模を問わず対策が求められています。本記事では、複合機のセキュリティに関するリスクの全体像から、搭載されているセキュリティ機能、導入時に行うべき設定手順、日常の運用ルールまでを網羅的に解説します。
複合機に潜むセキュリティリスクの全体像
複合機のセキュリティリスクは、大きく「外部からの脅威」「内部からの脅威」「物理的な脅威」の3つに分類できます。
| 脅威の分類 | 具体的なリスク | 被害例 |
|---|---|---|
| 外部からの脅威 | ネットワーク経由の不正アクセスマルウェア・ランサムウェア感染ファームウェアの脆弱性攻撃 | 複合機の乗っ取り社内ネットワーク全体への拡散機密データの外部送信 |
| 内部からの脅威 | 印刷物の放置・持ち出しFAXの誤送信不正なコピー・スキャン退職者アカウントの放置 | 顧客情報の漏洩機密書類の流出取引先への誤送信 |
| 物理的な脅威 | HDD/SSDのデータ残存USBメモリ経由の感染複合機の盗難・破壊 | リース返却時のデータ流出ウイルスの社内拡散 |
これらのリスクに対して、複合機には多層的なセキュリティ機能が搭載されています。しかし、購入・リース時の初期状態ではすべての機能が有効になっているわけではなく、自社の環境に合わせて適切に設定する必要があります。
複合機に搭載されている主なセキュリティ機能一覧
| 分類 | セキュリティ機能 | 効果 | 対応する脅威 |
|---|---|---|---|
| 認証 | ユーザー認証(ID/パスワード・ICカード) | 利用者の特定と不正利用の防止 | 印刷物の放置防止不正コピーの抑止 |
| 認証 | 管理者パスワード | 設定変更の制限不正操作の防止 | 設定改ざんの防止 |
| ネットワーク | ファイアウォール | 外部からの不正アクセスをブロック | 乗っ取り・不正アクセス |
| ネットワーク | IPアドレスフィルタリング | 許可されたIPからのみアクセスを受け付ける | 外部からの侵入防止 |
| 暗号化 | SSL/TLS暗号化通信 | 通信データの盗聴・改ざんを防止 | 通信傍受の防止 |
| 暗号化 | HDD/SSD暗号化(AES128/256bit) | 内部データを暗号化し物理的な持ち出しに対応 | HDD盗難時のデータ保護 |
| データ | データ上書き消去 | ジョブ完了後にデータを自動上書きして復元不可に | データ残存リスクの排除 |
| 操作制御 | USB使用制限 | USBポートの使用を管理者が制限 | USB経由のウイルス感染 |
| 操作制御 | FAX誤送信防止(二重確認・プレビュー) | 送信前に宛先を再確認する仕組み | FAX誤送信による情報漏洩 |
| 監査 | 操作ログ・アクセスログの記録 | 誰がいつ何をしたかを記録・追跡可能に | 不正利用の抑止事後追跡 |
| 保護 | ファームウェア改ざん検知(TPM) | 起動時にファームウェアの正当性を自動検証 | ファームウェアの改ざん攻撃 |
| 印刷 | 不正コピーガード・地紋印刷 | コピーすると「複写禁止」の文字が浮き出る | 機密文書の不正コピー抑止 |
複合機の導入時に行うべきセキュリティ設定手順
複合機を新たに導入した際や入れ替えた際に、最初に行うべきセキュリティ設定を優先度順に整理しました。
STEP1:管理者パスワードを初期設定から変更する【最優先】
複合機の管理者パスワードは初期設定のままになっているケースが非常に多く、最も基本的かつ最も重要な対策です。初期パスワードはメーカーごとに共通のため、変更しないままでは誰でも管理画面にアクセスできてしまいます。英数字・記号を組み合わせた12文字以上の強固なパスワードを設定しましょう。
STEP2:ファイアウォール・IPフィルタリングを設定する
複合機にアクセスできるIPアドレスを社内ネットワークに限定し、外部からの不正アクセスを遮断します。この2つの設定だけで、ネットワーク経由の乗っ取りリスクを大幅に低減できます。
STEP3:ユーザー認証を有効にする
複合機の利用にユーザーIDとパスワード、またはICカードによる認証を必須に設定します。これにより、印刷物の放置防止と不正利用の抑止の両方を実現できます。ユーザーごとに使用できる機能(コピー・FAX・スキャンなど)を制限することも可能です。
STEP4:通信の暗号化を有効にする
SSL/TLSやIPsecを有効にして、複合機とPC間の通信を暗号化します。ネットワーク上でスキャンデータや印刷データが盗聴されるリスクを防ぎます。
STEP5:HDD/SSDの暗号化と自動消去を設定する
内部ストレージの暗号化を有効にし、ジョブ完了後のデータ自動上書き消去を設定します。この2つを設定しておけば、HDD/SSDが物理的に取り出されてもデータを読み取れず、日常的に処理されたデータが内部に残り続けることもありません。
STEP6:USBポートの制限・FAX誤送信防止を設定する
USBメモリの使用を制限し、FAX送信時の宛先二重確認機能を有効にします。これらは人的ミスや物理的な感染経路に対する対策として有効です。
STEP7:ファームウェアを最新バージョンに更新する
導入時のファームウェアが最新でない場合は、すぐにアップデートします。古いファームウェアには既知の脆弱性が含まれている可能性があるため、最新版への更新は必須です。
複合機のセキュリティを維持するための日常の運用ルール

印刷物はすぐに回収する
出力した書類は印刷後すぐに複合機から回収する、というルールを社内に徹底しましょう。機密度の高い文書については、ICカード認証印刷(本人が複合機の前に行かないと出力されない仕組み)を必須にすることで、放置リスクをゼロにできます。
退職者・異動者のアカウントを速やかに削除する
従業員が退職・異動した場合は、複合機のユーザー認証情報を速やかに削除しましょう。アカウントが残ったままだと、退職者が不正にアクセスするリスクがあります。
ファームウェアの更新を定期的に確認する
メーカーから提供されるファームウェアアップデートを定期的に確認し、セキュリティパッチがリリースされたら速やかに適用しましょう。半年に1回はメーカーや販売店に確認する習慣をつけることをおすすめします。
操作ログを定期的に確認する
複合機の操作ログを定期的に確認することで、不審なアクセスや異常な使用パターンを早期に発見できます。「深夜にFAXが送信されている」「見知らぬIPアドレスからのアクセスがある」などの異常が見つかれば、すぐに原因を調査しましょう。
リース返却・廃棄前にデータ消去を実施する
複合機をリース返却する際や廃棄する際は、HDD/SSDのデータを上書き消去または物理破壊することが不可欠です。メーカーや販売店に消去証明書の発行を依頼しておくと、対外的な説明責任を果たすことができます。
メーカー別|複合機のセキュリティ機能を比較
| 機能 | キヤノン | リコー | 富士フイルムBI | シャープ | 京セラ |
|---|---|---|---|---|---|
| ユーザー認証 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
| HDD暗号化 | AES256 | AES256 | AES256 | AES256 | AES256 |
| データ上書き消去 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
| TPM(改ざん検知) | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
| ファイアウォール | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 操作ログ管理 | ◎ | ◎全ワークフロー対応 | ◎ | ○ | ○ |
| 不正コピーガード | ◎ | ◎地紋印刷対応 | ◎ | ○ | ○ |
| セキュリティ総合評価 | ◎多層防御 | ◎ログが充実 | ◎暗号化最強 | ○標準的 | ○標準的 |
セキュリティ対策を最優先に考える場合は、キヤノン・リコー・富士フイルムBIの3社が特に充実した機能を備えています。リコーは操作ログの網羅性が高く、コピー・FAX・スキャン・プリントすべてのワークフローのログを記録可能です。富士フイルムBIはAES256bitの暗号化とTPMチップによるファームウェア改ざん検知を備え、官公庁や金融機関での採用実績が豊富です。
複合機のセキュリティに関する国際基準と認証
Common Criteria(CC認証 / ISO/IEC 15408)
Common Criteriaは、IT製品のセキュリティ機能を第三者が評価・認証する国際基準です。主要メーカーの複合機はCC認証を取得しており、セキュリティ機能が国際的な基準を満たしていることが保証されています。CC認証の取得は、官公庁や大企業の調達条件になることが多いです。
IEEE 2600 / JBMIAガイドライン
IEEE 2600はハードコピーデバイス(複合機やプリンター)のセキュリティ要件を定めた国際規格です。日本国内ではJBMIA(ビジネス機械・情報システム産業協会)が複合機のセキュリティガイドラインを策定しており、各メーカーがこのガイドラインに準拠した製品開発を行っています。
まとめ|複合機のセキュリティ対策は導入時の設定と日常の運用が鍵
複合機のセキュリティ対策は、「外部からの脅威」「内部からの脅威」「物理的な脅威」の3方向に対して、認証・暗号化・アクセス制御・ログ管理・データ消去といった多層的な対策が求められます。幸い、現代の業務用複合機にはこれらに対応するセキュリティ機能が搭載されていますが、初期状態ではすべてが有効になっているわけではありません。
導入時に管理者パスワードの変更、ファイアウォール・IPフィルタリングの設定、ユーザー認証の有効化、暗号化の設定を行い、日常の運用では印刷物の回収ルール、ファームウェア更新、ログ確認を習慣化することで、複合機のセキュリティレベルを大幅に向上させることができます。
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