ネットワーク障害の事例7選|大規模障害の原因・影響と事例から学ぶ教訓を徹底解説
目次
近年、大手通信キャリアや大企業で発生した大規模なネットワーク障害が社会的な問題として注目を集めています。ネットワーク障害は通信事業者だけでなく、物流、金融、製造、行政など幅広い分野に連鎖的な影響を及ぼし、企業活動や市民生活に深刻なダメージを与えるケースが相次いでいます。
総務省への報告が必要な通信障害の件数は2021年度に6,696件に達し、増加傾向が続いており、ネットワーク障害のリスクはすべての企業にとって身近な脅威となっています。
本記事では、近年日本国内で発生した代表的なネットワーク障害の事例を時系列で紹介し、それぞれの障害の原因と影響、さらに事例から学ぶべき教訓と企業が取るべき対策について詳しく解説します。
国内で発生した主なネットワーク障害の事例
ここでは、近年日本国内で発生した代表的なネットワーク障害の事例を紹介します。いずれも社会的に大きな影響を及ぼした事例であり、ネットワーク障害がいかに広範な被害をもたらすかを知る重要な手がかりとなります。
それぞれのネットワーク障害の事例について、発生時期、影響規模、原因、社会的影響を詳しく整理していきます。
KDDI大規模通信障害(2022年7月)
2022年7月2日未明に発生したKDDIの大規模通信障害は、近年のネットワーク障害の事例の中でも最大規模のものです。発生から完全復旧までに約61時間を要し、延べ約3,091万人以上の利用者に影響が及びました。原因はメンテナンス作業中のルーター設定ミスを発端とした輻輳の連鎖的拡大でした。
この障害により音声通話やデータ通信が利用困難となっただけでなく、110番などの緊急通報も一時的に利用できなくなる深刻な事態に発展しました。法人向けサービスでも、ATMの利用障害、コネクテッドカー向けサービスの停止、空港スタッフ用無線機やバスのICカード決済への影響など、社会インフラの広範囲にわたって被害が発生しました。
KDDIはこのネットワーク障害の事例を受けて、手順書管理システムの導入やヒヤリハット分析システムの開発など、再発防止策に取り組んでいます。このネットワーク障害の事例は、メンテナンス作業のわずかなミスが数千万人規模の障害に発展しうることを示した、極めて教訓的な事例です。KDDIは中期経営戦略で500億円規模の追加投資を行い、通信基盤の強靭化に取り組む計画を発表しています。
NTT東日本・西日本 大規模通信障害(2023年4月)
2023年4月に発生したNTT東日本・西日本の大規模通信障害は、16都道府県にわたりインターネット接続サービスの最大約44.6万回線に影響が及んだネットワーク障害の事例です。早朝からお昼頃まで光回線でのインターネット通信が停止し、年度初めの時期ということもあり多くの企業の業務に支障をきたしました。
原因は通信機器の未知のバグ(ソフトウェアの不具合)であり、事前の検証では発見できなかった想定外の事象でした。この事例は、どれだけ万全な対策を講じていても未知の障害は発生しうるという教訓を示しており、バックアップ回線の確保など多層的なネットワーク障害対策の重要性を改めて浮き彫りにしました。
未知のバグは事前に完全に排除することが困難であるため、障害が発生しても影響を最小限に食い止める仕組みづくりが不可欠です。NTTグループはこの事例を受けて、2022年度から2025年度にかけて通信障害対策に1,600億円を投じる計画を打ち出しています。
NTTドコモ大規模通信障害(2021年10月)
2021年10月14日に発生したNTTドコモの大規模通信障害は、全国で約200万人に影響を及ぼし、発生から完全復旧まで約29時間を要したネットワーク障害の事例です。原因はIoT機器のサーバー切り替え作業中に発生したトラブルで、音声通話やデータ通信が利用しにくい状況が長時間にわたり続きました。
復旧後も回線の混雑による速度低下が継続し、完全な正常化までにはさらに時間を要しました。この事例は、IoT機器の急速な普及に伴い通信ネットワークへの依存度が高まる中で、メンテナンス作業の慎重な実施と障害発生時の迅速な情報提供の重要性を示すネットワーク障害の事例として広く注目されました。
IoT回線数は年々増加を続けており、通信ネットワークにかかる負荷も増大していることから、今後同様のネットワーク障害の事例が発生するリスクは高まっていると考えられます。
ソフトバンク大規模通信障害(2018年12月)
2018年12月6日に発生したソフトバンクの大規模通信障害は、約3,060万回線に影響を及ぼし、約4時間25分にわたって通話やデータ通信が利用できなくなったネットワーク障害の事例です。原因はコアネットワークを構成するサーバーのデジタル証明書の有効期限切れという、極めて初歩的なミスでした。
証明書の期限管理が適切に行われていなかったことが、大規模障害の引き金となりました。この事例は日本だけでなく、同じ機器を使用する海外の通信事業者でも同時に障害が発生しており、サプライチェーン全体にわたるリスク管理の重要性を示した事例としても注目されています。
デジタル証明書の期限管理という基本的な運用の不備が、数千万回線に影響する大規模障害を引き起こしたこの事例は、日常的な運用管理の重要性を痛感させるものです。
楽天モバイル通信障害(2022年9月)
2022年9月に発生した楽天モバイルの通信障害は、最大約130万回線に影響を及ぼし、約4時間半にわたってデータ通信が利用しにくい状態が続いたネットワーク障害の事例です。原因はシステム障害であると発表されており、音声通話は問題なく使用できたものの、データ通信に依存する多くのサービスが利用困難となりました。
この事例は、2022年にKDDI、NTT西日本に続いて大手キャリアで立て続けに発生した通信障害のひとつであり、単一のキャリアに依存する通信環境のリスクが改めて認識されるきっかけとなりました。2022年はKDDI、NTT西日本、楽天モバイルと立て続けに大規模通信障害が発生した年であり、通信業界全体の課題として社会的な議論を巻き起こしました。
全銀ネットシステム障害(2023年10月)
2023年10月に発生した全国銀行データ通信システム(全銀ネット)の障害は、金融インフラに影響を及ぼしたネットワーク障害の事例として大きな注目を集めました。この障害により一部の金融機関で約560万件の送金処理に遅延が発生し、企業間の資金決済や給与振込などに影響が及びました。
金融システムのネットワーク障害は直接的に経済活動に影響を与えるため、極めて高い可用性と冗長性が求められることを改めて示した事例です。金融インフラは一般企業のネットワーク以上に高い信頼性が求められるため、多重の冗長構成やリアルタイム監視体制の整備が不可欠とされています。
トヨタ生産指示システム障害(2023年8月)
2023年8月28日に発生したトヨタ自動車の生産指示システムの障害は、国内全14工場の全28ラインが丸一日以上にわたって稼働停止に追い込まれたネットワーク障害の事例です。部品の発注処理ができなくなったことが原因で、製造ラインが完全に停止しました。
世界的な自動車メーカーの全工場が同時に停止するという事態は極めて異例であり、製造業におけるネットワーク障害のリスクの大きさと、基幹システムの冗長化やバックアップ体制の整備がいかに重要であるかを示す事例となりました。
なお、2022年2月にもトヨタは部品仕入先の小島プレス工業のシステム障害を受けて国内全工場を停止しており、サプライチェーン全体のネットワーク障害リスク管理の重要性が繰り返し指摘されています。
ネットワーク障害の事例から学ぶべき5つの教訓
上記のネットワーク障害の事例から、企業が今後のネットワーク障害対策に活かすべき教訓を整理します。
単一のキャリア・回線への依存は危険
KDDIやソフトバンクの事例が示すように、単一のキャリアや回線にインターネット接続を依存していると、そのキャリアで障害が発生した際に業務が完全に停止してしまいます。異なるキャリアのバックアップ回線を用意するキャリア・ダイバーシティは、ネットワーク障害の事例から導き出される最も基本的かつ重要な対策です。
月額数千円程度の追加コストで導入できるモバイル回線のバックアップから始めることで、低コストでネットワーク障害リスクを大幅に軽減できます。
メンテナンス作業の品質管理を徹底する
KDDIやNTTドコモの事例では、メンテナンス作業中の設定ミスや作業手順の不備が大規模障害の発端となりました。作業手順書の厳格な管理、ダブルチェック体制の構築、変更履歴の記録、ヒヤリハット事例の共有など、人的ミスを防止する仕組みの整備がネットワーク障害対策として不可欠です。
ソフトバンクの事例が示すように、デジタル証明書の期限管理など基本的な運用の徹底も忘れてはなりません。
未知の障害にも備えた多層的な対策が必要
NTT東西の事例で明らかになったように、通信機器の未知のバグによるネットワーク障害は事前の検証だけでは完全に防ぐことができません。既知のリスクへの対策に加えて、想定外の障害が発生した場合にも業務を継続できるよう、回線やネットワーク機器の冗長化、バックアップ体制の構築など、多層的なネットワーク障害対策を講じておくことが重要です。
「想定外の事態は必ず起こる」という前提に立ち、障害発生時にも事業を継続できるBCP(事業継続計画)を平時から整備しておきましょう。
障害発生時の情報共有と復旧体制を整備する
複数のネットワーク障害の事例に共通する課題として、障害発生時の社内情報共有体制の不備が挙げられます。各部署が個別に復旧作業を進めた結果、システム全体として最適な復旧手段が取れず、障害が長期化したケースもありました。
障害対応マニュアルの整備、定期的な訓練の実施、インシデント対応の責任者の明確化により、迅速かつ的確な復旧体制を構築しましょう。システム全体を俯瞰して最適な復旧判断を下せる人材の育成も、ネットワーク障害の事例から得られる重要な教訓です。
基幹システムのネットワーク障害対策を見直す
トヨタや全銀ネットの事例は、製造業や金融業など業種を問わず、基幹システムのネットワーク障害が事業全体を停止させるリスクがあることを示しています。自社の基幹システムがネットワーク障害に対してどの程度の耐性を持っているかを定期的に評価し、冗長化やクラウドの活用、バックアップ回線の整備など、必要な対策を講じることが企業の事業継続にとって不可欠です。
ネットワーク障害の事例を他人事とせず、自社のリスク評価に積極的に活用する姿勢が求められます。
まとめ
本記事では、KDDI、NTT東西、NTTドコモ、ソフトバンク、楽天モバイル、全銀ネット、トヨタという7つの代表的なネットワーク障害の事例を紹介し、それぞれの原因と影響、そして事例から学ぶべき教訓を解説しました。
ネットワーク障害の事例からは、単一回線への依存の危険性、メンテナンス作業の品質管理、未知の障害への多層的な備え、障害発生時の情報共有体制、基幹システムの耐障害性の見直しという5つの重要な教訓が得られます。
ネットワーク障害は完全にゼロにすることはできませんが、過去の事例から学び、適切な対策を確実に講じることで、発生リスクの大幅な低減と被害の最小化を実現することが可能です。本記事で紹介したネットワーク障害の事例を自社のネットワーク環境のリスク評価に活かし、ネットワーク環境の見直しとBCP対策の強化に取り組んでいきましょう。
ネットワーク障害の事例を学ぶことは、自社のネットワーク環境を客観的に見つめ直す最良の機会です。今日からできる対策を一つずつ積み上げ、障害に強い事業基盤を構築していきましょう。